やっぱり耳かきが好き:現代日本の耳かき

耳かき屋の衰退と復活

戦後も床屋さんでの耳かきサービスは続いていましたが、次第に行われることが少なくなってきました。
その大きな理由が「医師法」です。

耳かきは「医業」

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医師法では、医師以外は医療行為を「業」としてはいけないと決められています。
医療行為とは、病気や怪我の治療・予防・診断などのための行為一般です。
つまり、医者や歯医者、薬剤師、看護師など以外の人で、医療行為を仕事として行うことはできないということです。

床屋さんは理容師で、髪や刈ったり髭を剃ったりすることを「業」にすることは認められていますが、医業は出来ません。
1948年制定の医師法では耳かきも医療行為の一種とされており、医業ができない理容師がこれをサービスの一環として行うことは違法となりました。

医師法及び関連法の解釈変更で復活

しかし、2005年の医師法関連の「解釈」の変更によって、耳かきを含む16種類の行為が医療行為から外されました(ただし、耳垢栓塞の治療は除く)。
元は介護事業のための変更でしたが、耳かきを事業化しても問題にならないということで、江戸時代のように耳かき専門屋が復活することとなったのです。

「耳かき専門店」の種類

耳かき専門店と一言で言ってもいろいろですが、大きく「耳掃除主体」と「雰囲気主体」に分けることができます。

耳掃除主体の店

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こちらは耳かきに特化したエステサロンのような感じで、耳を綺麗にすることでお客さんに気持ちよさを提供することを主眼にしています。
専門的な技能研修を受けて白衣を着たスタッフが、各種の耳かき、綿棒、スコープを使って耳掃除をしてくれます。

理容師の資格を持つ人もいるので、耳毛剃りもしてくれることもあります。
耳かきだけでなく、耳のツボや頭のマッサージをしてくれる所もあるようです。

あくまでエステサロンのような物なので、耳垢栓塞を治療することや、耳道が外耳炎になったり荒れたりしているときに耳掃除をしたりは出来ません。
それでも技能を持ったスタッフが、理容師やエステサロンに相当する安全管理をした上で掃除をしてくれるので、安全性は高いと言えます。

雰囲気重視の店

Photo By: Ruca Mascaro/2011/CC BY SA 2.0

Photo By: Ruca Mascaro/2011/CC BY SA 2.0

こちらは耳かきそのものよりも、「若い女性に(膝枕で)耳かきをしてもらう」ことを求めるお客さんのため店です。
スタッフは技能訓練を受けたり理容師の資格を持っていたりするわけではなく、アルバイトのこともあります。

奥の方まで掃除したり、耳毛をカットしてくれたりすることは無く、主眼はあくまで若い女性の膝枕による、癒しやリラクゼーションの提供です。
耳かきの技能についてはスタッフやお店によってまちまちで、中には風俗に近い物もあるようです。

こちらのタイプの耳かき屋を描いた漫画作品に、安倍夜郎氏の「山本耳かき店」があります。
割烹着を着た女店主に耳かきをしてもらう老若男女の客たちが癒される、日本人にしか分からない良さの作品です。

これからの日本の耳かき

最初はたくさんできた耳かき店ですが、しばらくたつとブームが過ぎたのか、数が減少し、残った所も規模の縮小せざるを得なくなったところが多いようです。
しかし、日本人の耳かき好きは江戸時代以前から続く習性のような物であり、耳かきそのものが廃れることはまずないでしょう。

もしかしたら床屋やエステサロンなどのサービスの一環として、再び「耳かき業」が定着するかもしれません。

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