軽くあでやか:鼈甲耳かき

ウミガメの甲羅から生まれる美

鼈甲耳かき

鼈甲(べっこう)とは、タイマイというウミガメの一種の甲羅を原料にした素材です。
見た目は半透明で赤みがかかった琥珀色をしており、褐色の斑点を持っています。
べっこう飴は、この鼈甲に色が似ていることからつけられた名前です。

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亀の甲羅はいくつもの層が重なった構造をしており、鼈甲の原料になるのは一番外側にある角質の層です。
確執は皮膚の表面と同じ物であり、その成分は皮膚やそれが変化した爪などと同様に、ケラチンというたんぱく質を主としています。

鼈甲細工を作るときは、鼈甲の層を型抜きして削り、熱を加えて万力などで圧着することで貼り合わせて、加工していきます。
精緻な細工の材料として適しており、かんざしや櫛、ブローチ、帯留め、眼鏡のフレームの材料などの材料に使われました。

鼈甲の性質

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感触はプラスチックに似ていますが、より軽く、触り心地に暖かみがあります。
また、人の体温ぐらいの温度でも変形する性質を持ち、眼鏡のフレームに用いると、使い込んでいくうちに肌に触れる部分が持ち主の耳や鼻にフィットしてきます。

鼈甲においては、褐色の部分が少なく透き通った黄色の部分が多いほど高級であるとされています。
耳かきでは、まだらの褐色の部分が主体の製品なら4000~5000円程度です。
褐色の部分が無くて全て琥珀色の物なら、1万円前後となります。

鼈甲の歴史

鼈甲細工

鼈甲の歴史はかなり古く、前漢(紀元前206~西暦8年)の遺跡から鼈甲の櫛が見つかっています。
日本には遣隋使の小野妹子が608年に持ち帰った鼈甲製の宝飾品があり、これらを含めた数点が奈良の正倉院に収められています。

江戸時代になると技術の発達によっていろいろな物が作られるようになり、産業の一つになるまで成長しました。
鎖国によって長崎が唯一の原料輸入窓口となったので、長崎が鼈甲細工の本場となり、現代にも受け継がれています。

鼈甲の希少性

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しかし、原料となるタイマイの数が激減し続けたため、1975年に発効したワシントン条約により、条約締結国間でのタイマイの取引は禁止されました。
日本はその後も輸入を続けていましたが、国際社会からの反発を受けて1993年に輸入を停止しました。

このため、現在流通している鼈甲は、輸入停止以前に入ってきた材料のストックを切り崩しながら作っている物です。
在庫の減少から廃業する業者も増えており、タイマイの生息数が大きく増えでもしない限り、新しく鼈甲細工が作られることはいずれ無くなるでしょう。

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