天然高弾性素材:クジラのひげ耳かき

ひげでもなければ歯でもない

クジラのひげ耳かき

「クジラのひげ」といっても顔に生えている毛ではなく、大型のクジラが口の中に持つ歯のような器官です。
これは口の中の皮膚が変化した物で、上あごに櫛の歯のようにびっしりと生えそろっています。

クジラのひげとは

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ひげを持つクジラの仲間(ヒゲクジラ亜目)はオキアミやプランクトンなどの小型の生き物を餌にしており、噛む必要が無いのでは歯を持っていません。
これらのクジラがエサを食べるときは、ひげをフィルターのように使って、海水から小さな生き物の群れを漉しとって丸のみします。

イルカやシャチ、マッコウクジラなどの歯を持つクジラの仲間は「ハクジラ」と分類されており、ひげは持っていません。
一応、どのクジラでも口の周りに体毛(本物のひげ)がほんの少しだけ残っていますが、こちらがクジラのひげと呼ばれることはありません。

クジラのひげの性質

 クジラひげサンプル

クジラのひげは爪と同じように皮膚の一部が変化した物なので、材料としての性質は爪とよく似ています。
軽くて良くしなり、引っ張る力に対して非常に強いのが特徴で、プラスチックの登場までは「エンバ材」と呼ばれて広く使われていました。

使い道としては、コルセットやドレスの形を整えるフレーム、傘の骨、バイオリンの弓の一部、釣り竿の先端などです。
裃の肩の部分、扇子の要、物差し、ぜんまい、文楽人形の操作索などにも使われており、一部では使用が続けられています。

クジラのひげの耳かき

クジラのひげはファイバー状になったケラチンが束になった構造をしており、繊維が一方向に並んでいるという点で竹とよく似ています。
しかし、竹よりもさらに柔軟性が高く、表面が滑らかなことも相まって耳への当たり心地は非常に良好です。

クジラの種類によってひげの色や長さ、繊維の太さが異なり、耳かきにしたときの違いもはっきりしています。
素材の形状を活かすため、柄の部分をあえて羽箒のような形に残したデザインの耳かきもあります。

クジラのひげの種類

クジラひげ

プランクトンなどの細かい物を食べるセミクジラなどは、ひげが非常に長くて数が多い傾向にあります。
コクジラは海底の泥からカニなどを漉しとって食べるので、ひげは歯のように固く短くなっています。

日本でよく流通しているイワシクジラのひげは黒く、長さは60cm程度で、320~400本とたくさん生えています。
同様に流通しているニタリクジラは、もう少し短く繊維が太いのが特徴です。
比較的小型のミンククジラのひげは、30cmぐらいで黄土色です。

クジラのひげの希少性

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捕鯨ははるか昔から行われていましたが、大航海時代が始まって以降は鯨油を求めた捕鯨が盛んとなったことで、クジラの数は大きく減りました。
第二次世界大戦後、クジラの持続的な利用を行えるようにするため国際捕鯨委員会(IWC)が発足しました。

その頃には既に石油が主要なエネルギー源となり、プラスチックも登場していたため、捕鯨を必要とする国は減少し、多くの種が保護対象となりました。
しかし、古くから捕鯨を行っていた日本やアイスランドは、数が安定して絶滅の心配が低い種類について、頭数を制限した調査目的の捕鯨を申請・実行しています。

現在の市場に出ているクジラの肉やひげは、国際捕鯨委員会に申請して許可を受けた調査捕鯨によって得られた物となっています。
獲られているのはイワシ、ニタリ、ミンクが主体で、稀にナガスクジラが少数獲られるだけです。

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