粉耳は少数派:世界の人々の耳垢

髪、目、肌、そして耳垢

人の耳垢のタイプ形質は、目や髪の色と同じように生まれつきの体質です。
湿性の人は生まれたときから死ぬまでずっと湿性であり、乾性に変わることはありません。
つまり、世界レベルで見てみると、耳垢も民族や地域ごとに一定の傾向がみられるということです。

耳垢の性質を決める遺伝子

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髪や目の色と同じように、耳垢の性質も遺伝子によってきめられています。
耳垢の性質を決める遺伝子が判明したのは比較的最近になってからで、2006年に長崎大学の吉浦孝一郎助教授と新川詔夫教授らの研究チームが偶然に発見しました。

人間の細胞の核にあるDNAには、体の形質を決定する約3万2000の遺伝子が入っています。
これら大量の遺伝子の中で、耳垢の性質を決めているのは「ABCC11」という部分です。

ABCC11遺伝子

遺伝子の内、ABCC11の部分が「G・G」あるいは「G・A」である場合、耳垢は湿性になります。
これに対し、「A・A」であれば、耳垢は乾性になります。
この変異は青い目や直毛、左巻きのつむじと同じような劣性遺伝です。

世界の耳垢分布

では、世界を見渡してみた場合、どれぐらいの人が乾性耳垢なのでしょうか?
世界中の33の民族でABCC11の変異を調べた新川教授らの研究により、乾性耳垢の人の割合について、地域ごとに特徴的な傾向があることが明らかになっています。

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この研究結果を世界地図に落とし込むと、乾性耳垢の人の人が多い地域は、ユーラシア大陸北東部に集中している様子が見て取れます。。

アジア人

乾性耳垢の比率が高いのは中国北部や朝鮮半島など、アジアの東北部一帯です。
この地域では乾性耳垢の人の比率はほぼ100%で、飴耳の人はごく少数です。
そこから離れるにしたがって乾性耳垢の人の比率は低下し、日本では7~8割、東南アジアでは7~5割になります。

インドネシアやタイの比率が高いのは華僑(中国にルーツを持つ人々)の数が多いことが原因のようです。
実際、乾性耳垢の人が多いのは移民が多い都市部で、各地の少数民族だけで見た場合、乾性耳垢は半々、あるいは少数派になっています。

アジア以外の地域

アジアから離れると乾性耳垢の人の率はますます低くなり、ヨーロッパでは1~2割、アフリカでは5分以下となります。。
この地域になると耳垢=アメ耳というのが常識で、アフリカでは粉耳の存在すら認知されていないかもしれません。

アメリカ大陸の先住民はアジアの多くの人々と同じモンゴロイドで、乾性耳垢の比率も北米では50%とアジア並みに高い値にあります。
しかし、南に行くにしたがって低下していきます。

南北アメリカ大陸はヨーロッパやアフリカがルーツの人々の数の方が多いので、人口全体からみた乾性耳垢の人の比率は、これよりももっと低下するでしょう。
日本では乾性耳垢の人が多いために意識しませんが、世界的に見ると比較的珍しい体質であるということです。

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