人体の神秘:耳の構造

 耳の穴は節穴にあらず

耳かきについて知る前に、まずは人間の耳について見て行きましょう。
外から見える耳はただの穴のようですが、音を捉えることに最適化された、実に精緻な構造を有しています。

人間の耳を断面図にしてみると、このような形になっています。

耳の構造

大きく分けて、外側の部分が外耳、鼓膜(緑色に塗られたところ)から内側の部分が中耳、一番奥にある重要な器官(紫色の部分)が内耳という名前です。
耳掃除で触るのは外耳の入り口に近い部分だけで、鼓膜より奥の部分はアンタッチャブルな領域となっています。

耳の穴:外耳

外耳

外から見える「耳」は、専門的には「耳介」という名前です。
内部には骨が入っておらず、鼻と同じように軟骨と皮膚だけで成り立っています。
パラボナアンテナのように音を耳へと集める機能を持っていますが、人間の場合はそれほど音が集まるわけではないようです。

耳の入り口から鼓膜までのトンネルの部分が「外耳道」と呼ばれています。
ここがいわゆる「耳の穴」で、長さは成人なら2.5~3cmぐらいです。
外耳道の内側は体の表面と同じように皮膚で覆われており、脂(皮脂)や汗を分泌する腺、毛穴も存在します。

外耳道の奥にあるのが鼓膜です。
直径0.8~1cm、厚さ0.1mm程度の膜で、音の振動を奥に伝える役目を持ちます。

音の伝達室:中耳

中耳

鼓膜の奥にある部分が中耳です。
ここにある空間は「鼓室」と呼ばれ、鼓膜で受けた音を奥に伝える「耳小骨」という3つの骨がつながっています。

骨は鼓膜から近い順に、「ツチ(鎚)骨」、「キヌタ(砧)骨」、「アブミ(鐙)骨」という名前です。
この骨は人体の中で最も小さい骨で、それぞれの大きさは2.6~3.4mm、重さはわずか0.002~0.0043gしかありません。

鼓膜から伝わった音は、てこの原理によって動く耳小骨を通る間に約22倍に増幅されます。
鼓膜とアブミ骨の間には小さな筋肉がついており、大きすぎる音が伝わってきたときはこの筋肉が自動的に収縮し、強すぎる音をブロックするようになっています。

中耳から下に伸びる管は「耳管」と呼ばれ、鼻につながっています。
この部分は中耳の粘膜から出る分泌物を排出したり、中耳と外部との気圧を調節したりする機能を持ちます。
また、中耳に入って来た細菌やウイルスを排出する役目もあります。

耳の中枢:内耳

内耳

内耳は耳小骨から伝わった音を、電気信号にして脳に送る部分で、「蝸牛(かぎゅう)」「前庭」「半規管」のパーツから成ります。

「蝸牛」はカタツムリの意味で、その名の通りカタツムリにそっくりの形をしています。
ここは伝わった音を電気信号に変換して神経から脳に送り出す役目を持ちます。

半規管は蝸牛からループするように突き出した3つの構造です。
こちらは角加速度(回転の動き)を感知する働きがあります。
3つあるのは三次元の方向全ての加速度を検知できるようにするためです。

前庭は内耳に接している部分で、頭の傾きや直線加速度(まっすぐな動き)を感知する器官です。
この部分から、半規管と前庭で検知した体のバランスに関する信号を脳に伝える神経が伸びています。

このように、内耳は音のみならず体の動きやバランスも検知するので、耳を損傷すると聴覚のみならず、平衡感覚にも影響が生じることがあります。

※当サイトへのリンクを歓迎いたします。
(管理人へのご連絡は不要です)
PAGE TOP